この女性は、長い間このライオンを世話していました。育ての親のようなもので、そのうえ2人は親友同士でした。でも、女性がある日突然引っ越さなければならなくなり、何年もお互いに会うことができませんでした。ところが、8年が経った頃、女性は戻ってきたのです。
その時、ライオンは予想外の行動を取りました。反応にご注目を！
この8年は、ライオンにとって辛い日々でした。来る日も来る日も、世話係であるリンダの姿を探し求めました。
ライオンのマービンは、物陰に座って世話係が現れるのを待つようになりました。でも、彼女にはもう何年も会えていませんでした。可哀想なライオンは不安げで、本当に泣いているように見えることもありました。
そして8年という月日が流れました。リンダもマービンも、どれほどお互いに会いたかったことでしょう。そこに、思いがけなくリンダが戻ってきました。彼女がマービンに会いに来た時、マービンは彼女を覚えているかしらと、誰もが首をかしげました。
緊張が高まりました。そしてマービンは、その場の誰もがアッと言う行動を取ります！
あの頃、リンダは、ツアーガイドとしてあちこちを回っていました。アフリカのサバンナの中で、旅行者のガイドをしていたのです。もう長いことサファリのツアーガイドとして働いていた彼女でしたが、この日のツアーはまったく特別なものになりました。
車に乗り込んだ一行は、まずはキリンやハイエナのそばを通りました。ツアー客はそれだけでも感心するものですが、目玉はこれからです。もう少し先に行けば、ライオンの縄張りであることをリンダは知っていました。
そして、リンダが解説を始めないうちから、最初の雌ライオンが現れました。彼女たちは本当に美しい動物でした。中には子どもを連れた雌ライオンもいました。
ところが残念なことに、辺りには不穏な空気が漂っていました。雌ライオンたちを付け狙っている者たちがいたのです！
雌ライオンたちの警告の声を耳にしたリンダは、運転手にできるだけ速く車を走らせるよう大声で指示しました。何が起こっているのかわからない旅行客たちは困惑しましたが、何が起こっているのかリンダにははっきりとわかっていました。彼らを乗せた車は、声が聞こえた方に向かって全速で走りました。
リンダは訳がわからないツアー客に言いました。「密猟者です！」
密猟者たちは、一行が現場と思われる地点に着いた時には既に逃げ去って、陰も形もありませんでした。リンダたちがやってくる物音を聞きつけたのは明らかでした。幸いにも、彼らにライオンを狩る時間はありませんでした。
車から降りたリンダは、慎重に現場に近づきました。砂の上にしゃがみ込もうとした時、近くの茂みの中で何かが動くのが見えました！
そこには、独りぼっちでうずくまっている小さなライオンの子どもがいました。母親が逃げてしまい、置き去りになったのです。母親がもう戻って来ないことはほぼ確実でした。
ライオンの子どもは目に恐怖と混乱の色を浮かべていました。それを見た瞬間、リンダは自分がすべきことを理解しました。
リンダの中にたちまち小さなライオンへの母性愛が湧き上がり、彼を腕に抱き上げました。そして米国に帰り、彼女の家の近くにある野生動物保護区に連れて行くことにしました。
そして、その考えは実行されました。野生動物保護区で仕事を見つけたリンダは、8年にわたってマービンと名付けたそのライオンの世話を続けました。ふたりは強い絆で結ばれ、彼らが一緒にいる様子は他の職員が見ても微笑ましいものでした。「マービンはリンダにとっては息子みたいなものでした」、と職員のひとりは言いました。
ところが、突然リンダは去らなければならなくなりました・・・
その時、リンダとマービンは楽しくじゃれ合っていました。リンダの携帯電話には、もう3回もの着信通知が入っていました。誰かが何度も電話をかけているのです。緊急連絡かもしれないと思ったリンダは、動物居住区を出て折り返しの電話をかけることにしました。
電話は彼女のパートナーからでした。ロンドンに仕事を見つけたパートナーは、翌日には米国を出発しなければなりませんでした。リンダはマービンとパートナーの狭間で引き裂かれる思いでしたが、最終的にはパートナーと一緒に行くことにしました。それは彼女にとってもとても辛い決断でした。
何か月も悲しみに沈んでいたリンダですが、ただマービンに会うためだけに米国に飛んで戻るわけには行きませんでした。それから何年も地球の裏側で幸せに暮らしていたリンダですが、やがてパートナーとの関係には、終止符が打たれることになりました。
リンダは、すぐにもマービンに会いたいと思いました。でも、再会の瞬間があんなふうになるとはまったく思ってもいませんでした・・・
リンダは居住区域に入り、直接マービンに接触しようとしました。マービンは緊張した様子でした。野生動物と接する場合にはあまりいい兆候とは言えません。リンダのことをじっと見つめながら、木々の間を行ったり来たりしました。
そして突然立ち止まると、リンダの方に体を向けました。何をしようというのでしょう？まだ彼女のことを覚えているでしょうか、それとも彼女を攻撃しようとしているのでしょうか？
マービンに対するリンダの自信が揺らいだことはありませんでした。でもこの瞬間、リンダの心に不安がよぎりました。
緊張した面持ちの以前の世話係に向けたマービンの歩みがどんどん速まりました。そして、リンダに向かって飛びかかりました・・・
マービンはリンダを地面に押し倒すと、親友の顔を猛烈に舐め始めました。マービンがリンダを覚えており、リンダを再びハグできて大喜びしているのは明らかでした。ふたりはじゃれあって転げ回り、その感動的な光景を見ていた他の世話係たちの目には、涙が光っていました。
リンダの反応はまったく見物でした。腕をマービンの体に巻き付け、彼の顔を思い切り舐め返しました。まるで、マービンの本物の母親のような舐め方でした。
ライオンの体の毛が何本か口に入っても、リンダは気にしませんでした。そしてその日から現在まで、このふたりはいつも一緒です！
